ペット産業で活躍する経営者や専門家をゲストに招き、日本の動物医療やペット産業の現状と将来について深掘りするセミナー形式のインタビューシリーズ。
国内では犬の飼育頭数が減少し、市場が厳しさを増していくことが予想されます。このような状況下で、私たちが取るべき市場判断と今後の施策とは何でしょうか。現状分析と市場展望を中心に、お話を伺っていきたいと思います。
ゲスト
片山 俊次(かたやま としつぐ)
日本ペットフード株式会社 代表取締役社長執行役員
一般社団法人ペットフード協会 副会長
一般社団法人DIY・ホームセンター協会 理事
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生田目
そうですね。
ペットフードの高単価需要は、飼い主がより良いものを求める意識の高まりが背景にありそうです。
この場合の懸念点としては、良いように謳って低品質高価格の商品が広まる危険性かと思います。
実際のところ、片山社長のご存知の範囲ではこのような売り方は存在するでしょうか。
片山
意図的にやっているかどうかはわかりませんが、似たような現象は起きていると思います。
ここからは、私が理事を務めているペットフード協会としての観点からもお話しますね。
ペットフード安全法では、原材料について100%記載することを求めていますが、原材料の表示順については決められていません。ペットフードの表示に関する公正競争規約では、原材料を使用量の多い順に記載するよう定めています。新規参入の会社はペットフード公正取引協議会に加入していないところも多く、ペットフードの表示に関する公正競争規約に従っていない商品も見受けられます。
商品の特徴的な成分を前面に出すことで、飼い主のヘルスケア指向に対して訴えかけるものが多くみられますが、ペットフードでは効能・効果を訴求することはできません。
また、健康を意識して有効成分を目的にプレミアムフードを購入しているにも関わらず、成分が実態と異なることで期待された効果を得られない場合があることも懸念されます。
生田目
残念ながら、そのような商品も出回っているのですね。
飼い主が成分や原材料をよく見るようになったからこそ起こる新たな問題とも言えますね。
ただ、獣医師や栄養学の知識がある人からすれば、非常に厄介ですね。
片山
おっしゃる通りです。
専門家としては、飼い主様の相談を受けてペットフードを勧めることが多々あると思います。
特に、獣医師にとっては病気のペットの栄養管理に関わる問題ですから、尚更よくありません。
最近、原材料の最初に肉類が記載されているフードが質のいいフード、と言われることがあるのですが、原材料を多い順に記載することは公正競争規約上のルールで、ペットフード安全法では原材料の表示順について定めていません。また、肉を乾燥した状態で使用する場合と生で使用する場合では、水分の有無によって同じ蛋白量でも大きく重量が変わりますので、そのことだけでフードの栄養価を測ることはできません。飼い主であれば、だれでも栄養バランスがとれた食事をペットに与えたいと思います。
食事管理は健康の維持や病気の改善に最も大事なものですから、
ペットフードを製造・販売している側がペットの健康を第一に考えなければならないと思います。
生田目
栄養学の知識が浅く、売上だけにこだわるとペットの健康を害することが起きるかもしれませんね。
フードを作る際には最低限の勉強はしておいていただきたいところです
それでは最後に、ペットフード協会の副会長として、ペットフードビジネスを行ううえで心がけてもらいたいことはありますでしょうか。
片山
先ほどもお話ししましたが、原材料表示において公正競争規約は重量に沿った表示順での記載を求めています。
しかし、順序規制だけでは原材料をより詳細に知りたいという要望に対応できません。
そこで、ペットフード公正取引協議会では順序基準と、より詳細な2つの表示方法を推奨しています。
1つは複合原材料に含まれる原材料を分解して記載することです。
例えば、カニカマを使っている場合、原材料はカニカマが使用されていることを読み取れるように記載することを求めていますが、魚やカニエキスなど、カニカマもその原材料名に分解して記載することを例外として認めています。
複合原材料名だけを記載してしまうと、アレルギーの原因食材が特定できない場合などがあるからです。
もう1つは原材料に含まれる添加物についても種類を記載することです。
ペットフード安全法では、原材料中に含まれる添加物については記載義務がありませんが、
飼い主様の中には、アレルギーの原因になるものや添加物を非常に注意深く観察される人もいます。
詳細に情報提供することが飼い主様の安心につながり、ビジネスとしてのメリットも得られると思います。
ペットフードをつくる会社は顧客を第一に考えたビジネスを心がけていただきたいと思っています。
正すところは正して、健全な差別化によって競争が活性化する業界を一緒に目指していきましょう!
生田目
ありがとうございます。
これからもペットと飼い主、ペット業界で働く人々の幸せのために、一緒に業界を盛り上げていきましょう。
本日はありがとうございました。
【プロフィール】
生田目 康道(なまため やすみち)
株式会社QIX 代表取締役 社長
株式会社JPR 代表取締役 社長(プリモ動物病院)
株式会社EDUWARD Press 代表取締役 会長
株式会社QAL startups 代表取締役共同CEO
一般社団法人日本ペットサロン協会 専務理事
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