「顧客視点」と「実績」という、前進のための原動力。 vol.1

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #3 】

ゲスト:『水曜どうでしょう』チーフディレクター 藤村忠寿 氏


獣医療を起点とし、人とペットの間にある課題を解決するスタートアップスタジオ「QAL startups」。その中心メンバーにして、獣医師・連続起業家である生田目康道氏(QAL startups代表取締役)が、これからのペット業界に求められるビジネスの姿を探求していく連続対談シリーズ。


その第3回目は、テレビ業界の常識を破り続け、もはや伝説と言える人気番組「水曜どうでしょう」のチーフディレクターとして知られる、北海道テレビ放送株式会社の藤村忠寿さんにご登場いただきました。


■「視聴率なんてどうでもいい」と言える秘密


生田目:QAL startupsは、動物医療を基点としたさまざまな事業を連続的に創出していくスタートアップスタジオです。藤村さんは、この「スタートアップスタジオ」というものはご存じでしたか?


藤村:お話を聞くまで全然知りませんでした。でも、「経営者を次々と生み出していく組織」という説明を聞いて、「それって、まさにオレがやっていることじゃないか」とは思いました。


僕は「水曜どうでしょう」という番組を単にプロデュースするだけじゃなく、ひとつの会社を経営するような感覚で作ってきました。テレビ局のサラリーマンではあるけど、組織から独立した立場で儲け方を考えてきたんです。


制作費や経費は会社からもらうけど、それ以上のものを会社に返す。そういうことをやってきたから、立場としては非常に自由にやっています。おかげで会社に行くこともほとんどなくなりました(笑)。


生田目:まさに会社員の枠を超えて活動されている。


藤村:いや、これこそが会社員の本当の姿だと思っているんですよ。


みんな会社のルールに従ってやりたがるけど、それは従属しているだけであって。それぞれ好き勝手にいろんなことをやって、でも利益はしっかりと出す。そういう社員が増えたほうが、会社は絶対に強くなると思う。だけど、会社はそういう存在をなかなか認めない。それはなんでだ、という疑問が自分の中にはずっとあります。


生田目:やっぱり、「いままでのやり方を変えたくない」という考え方が根強いのでしょうね。


藤村:いまはいろんな業界、企業で“多角化”と言われていますよね。テレビ局も多角化が必要だと言っているけど、それは不動産に手を出すとかそういうことじゃなくて、本業の稼ぎ方を多角化したほうがいいと思っているんです。テレビ業界はそこを誰も考えてこなかった。


テレビは大量の番組を毎日放映しています。でも、あれはほとんどが使い捨てなんですよ。コンテンツをリサイクルするという発想がない。


例えば、最近は朝から夕方まで生放送の番組ばかりでしょう? なんでそうなったかというと、生放送はいちばん手間がかからないからです。スタッフの数は必要ですけど、作る手間としてはもっとも楽な方法です。その代わり、せっかく作っても使い捨て。


その意味で、テレビ局はコンテンツを作っているようで、実はほとんど作っていない。ドラマみたいにしっかり作り込んだ番組なら、二次利用の方法はいろいろあります。でも、生放送が増えると、とにかく視聴率を稼いで、スポンサーからたくさんおカネを集めようとしかならなくなる。でも、そこに限界が来ているからテレビ局は苦しいわけじゃないですか。


だから、「水曜どうでしょう」は自分たちで率先してDVD化をしてきました。最初は「ローカル番組のDVDなんて売れるわけない」と言われましたけどね。


それがフタを開けたらめちゃめちゃ売れたんです。地方局がCMでもらう金額とは比較にならないくらい儲けました。グッズ販売やイベントもやって、おそらく単独の番組が稼いだ金額としては、キー局を含めても、「水曜どうでしょう」がトップでしょう。


こんなふうにやっていくと、視聴率とは全然関係なくビジネスが成立します。いまでは視聴率なんてどうでもいいと本気で思っていますね。テレビ業界でも僕らくらいじゃないかな、そんなことを堂々と言えるのは。


>> https://qalstartups.co.jp/