獣医療業界の未来を背負う 八面六臂の活躍をする獣医師 Vol.7【最終回】

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・上野弘道(東京都獣医師会 会長、獣医師、博士(獣医学))


■愛玩動物看護師の現状と今後、求められることとは 続き


生田目:私は、正直いまだに“ベテリナリーテクニシャン”と“ベテリナリーナース”の違いがいまいちわかっていないのですが...(笑)。いわゆる“ベテリナリーナース”になっていくためにはどうしていくのがいいのでしょうか?


上 野:おそらく、獣医師からの指示のみで行動しているうちは“ベテリナリーテクニシャン”要素が強いのではないかなと思います。日本動物医療センターの愛玩動物看護師は、獣医師に指示される前に入院している動物のごはんを自分で選び、これで問題がないか獣医師に相談しに行きます。そのうえで、その子に合わせたカロリー量を計算し、食べない場合はさまざまな工夫をして食べてくれる方法を探しています。そうしていくことで“ベテリナリーナース”に近づくことができるのではないかと思います。

生田目:ヒトの看護師のようになっていくことが理想ですよね。


上 野:そうですね。ヒトの看護師も最初は点滴に薬剤を入れることさえできなかったのですが、自らが社会に信頼を積み重ねていった結果、今の業務ができるようになったと聞いています。

国家資格化となる前は獣医師の指示通りに動いていることが多かったかもしれませんが、今後は愛玩動物看護師として何ができるかを自分で考え、行動できるようになってほしいと考えています。獣医師からの指示に対しておかしいなと思ったことに、きちんとストップをかけられるような存在になることが理想的です。また、技術者として正しいアウトプット・インプットをしていくことも重要ですね。


自分で考えて行動することによって知識や技術の幅が広がるので、飼い主さんへのアドバイスの仕方も変わってくると思います。たとえば、今まではしつけの話だけしかできなかったことが、知識が増えると今までとは違った視点でコミュニケーションがとれるようになります。そうすれば、しつけの悩みだけではなく、飼い主さんが抱えている他分野の問題を解決することができると思います。これは愛玩動物看護師がますます活躍できる領域ではないかと期待しています。


生田目:今後、愛玩動物看護師には技術的なことだけではなく、幅広い活躍が求められていくのですね。私たちも現場で必要とされている情報を常にピックアップし、愛玩動物看護師の皆さんに提供していきたいと思います。

上野先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。


上 野:こちらこそありがとうございました。



上野 弘道(うえの ひろみち)


  • 公益社団法人 東京都獣医師会(TVMA) 会長
  • 公益社団法人 日本獣医師会(JVMA)理事
  • 公益社団法人 日本動物病院協会(JAHA) 副会長
  • 一般社団法人 日本小動物整形外科協会(VOA Japan)副代表理事
  • 日本動物医療センターグループ 代表 グループ最高経営責任者
  • 公益社団法人日本動物病院協会(JAHA) 外科認定医
  • 帝京科学大学 非常勤講師
  • 獣医師、博士(獣医学)


日本大学 生物資源科学部獣医学科卒。獣医師国家試験合格。2016年名古屋商科大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得。2001年に日本動物医療センターで診療を開始、勤務医として多くの手術を手掛けて外科的スキルを磨く。獣医師、経営者としての手腕を発揮し、医療部長、副院長などを経て3代目院長へ。2022年3月に同センターグループの代表に就任。同年6月に東京都獣医師会会長に就任。