ペット産業で活躍する経営者や専門家をゲストに招き、日本の動物医療やペット産業の現状と将来について深掘りするセミナー形式のインタビューシリーズ。
国内では犬の飼育頭数が減少し、市場が厳しさを増していくことが予想されます。このような状況下で、私たちが取るべき市場判断と今後の施策とは何でしょうか。現状分析と市場展望を中心に、お話を伺っていきたいと思います。
(この記事は3名による対談セミナーから、井東様との対談を抜粋して掲載しています)
ゲスト
井東 正樹(いとう まさき)
ジャペル株式会社 取締役
大規模流通システムでペット商材を届け続ける国内物流の要
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生田目
確かに、弊社では動物医療に近いケア用品を中心に扱っていますが、流通の方からはもちろん飼い主様からの意見も多く頂くようになりました。
意識の高い飼い主様が増えていることと、動物病院やペットサロンの卸売取引が増えていることにも相関性がありそうですね。
ジャペルさんの「ペットワゴン」など、EC販売チャネルは急成長していると思いますが、
実店舗チャネルからEC販売に置き換わる可能性はあるのでしょうか。
井東
おっしゃる通りで、弊社も含め、市場全体としてEC販売チャネルは右肩上がりです。
ただ、購買ルートが実店舗からECへ移行してきているなか、すべての商品がECに置き換わることはないと考えています。
特に専門性の高いケア用品やサプリメント等の初回購入は、基本的には実店舗で説明を受けて購入される傾向にあります。
機能的な高付加価値商品は、オンラインよりも手に取って説明を受けて吟味をしたいという顧客心理があるからです。
EC上では、分かりやすく短文で魅力的な文章を書くことが重要で、
機能性や特徴、対象などを細かく記載することは難しいです。
そのため、商品特性に応じて実店舗販売とオンライン販売はある一定の比率で安定すると思います。
ただし、このケア領域やサプリメント領域は市場として発展途上です。
獣医師や愛玩動物看護師、トリマーなどの専門家が商品を理解し、「必要な相手にしっかりと売る」ということを一般化させることにチャンスがあると考えています。
生田目
ペットの専門職種が活躍できる領域ですね。
ですが、基本的に専門職種であればあるほど「売る」というトレーニングは難しいと感じています。
井東
そうなんです。
販売をする上で、「商品ラインナップの不足」と「人材不足」という2点の問題があります。
作ることも使用用途を設計することも難しいので、この領域の確かな商品自体がまだまだ不足しています。
ただ、ここ数年で新規商品が急激に増えていますので、この点は時間とともに解決されると思います。
一方で、人材不足は非常に重要な問題です。
専門性のある商品ほど、しっかりと説明できるスタッフがいないということです。
専門職者が売ればいいと言っても、業界内の売上の4割は、犬猫の知識がまったくない人が担っています。
特に問題なのは、量販店に限らずペットショップでも専門性のあるスタッフはごく一部だということです。
実際にペット業界でこの役割を果たせるプロ人材は0.1%程度ではないでしょうか。
飼い主様のほうが知識レベルが高い場合もありますが、プロフェッショナルな販売員や専門職者がしっかりと説明した商品は、やはりしっかりと売れます。
ですから、この課題に取り組んだ店舗から売上が伸びるのではないでしょうか。
生田目
そうなると、現時点で動物病院とトリミングサロンはペット市場の規模拡大のカギになると感じます。
つまり、獣医師・動物看護師・トリマーといった専門職者たちが担う領域が広くなるのかなと思いますが、これについてのお考えを伺ってもよろしいでしょうか。
井東
そうですね。
本来であればペット流通の過程に専門家の方々がいてくれると大変安心ですし、理想的です。
商品開発もマーケティングも流通も販売も、犬猫のことを理解した人間が監修してほしいですね。
ただ、実際はそうではありません。
専門職者として「こうあるべき」という思いと、商習慣が大きな壁になっているのではないかと思います。
例えば、獣医師の中でも「獣医療は自分たちの業務範疇だけど、一般食の販売は自分たちがすべきことじゃない」ということを言われる先生もいます。
トリマーも「カットすること以外に手を回す暇がない、ただ施術し続けていたい」と最初から他の事業を入れようとしない店舗もまだまだ多くあります。
実際のところ、専門職間でも、また専門職と他のペット関連職種との間でも理解が不足していることが一番の問題だと思います。
彼らは学校を卒業してから専門分野をひたすら学ぶ教育機関に入り、卒業後はその専門性が最大限活かされる職場で働きます。
その過程で、自分たちの専門以外のペット事業の情報はほとんど入ってきません。
ただ、私は「商品を売ること」とは「顧客の生活を豊かにすること」であり、自分の事業を成長させることにつながると思っています。
ぜひ専門職の方ほど、業種交流を通じて売ることの重要性を感じてほしいですね。
Vol.4へつづく
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