ペット産業で活躍する経営者や専門家をゲストに招き、日本の動物医療やペット産業の現状と将来について深掘りするセミナー形式のインタビューシリーズ。
国内では犬の飼育頭数が減少し、市場が厳しさを増していくことが予想されます。このような状況下で、私たちが取るべき市場判断と今後の施策とは何でしょうか。現状分析と市場展望を中心に、お話を伺っていきたいと思います。
ゲスト
片山 俊次(かたやま としつぐ)
日本ペットフード株式会社 代表取締役社長執行役員
一般社団法人ペットフード協会 副会長
一般社団法人DIY・ホームセンター協会 理事
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生田目
確かに昔は外飼い・木でできた犬小屋・残飯の食事といった家畜に近い飼われ方をしていましたね。AAFCOの栄養基準によって業界も飼い主もペットの食に対する考え方が大きく変わったのですね。
今はより高品質なフードが好まれるなど、食意識がかなり高くなっているように感じます。
ペットフードの中には、大きく分けて犬用と猫用、その他の動物用の3つがあると思いますが、犬用と猫用で市場に差はあるのでしょうか。
片山
そうですね、フードの出荷量から見ると犬で約40%、猫で55%程度の流通があります。
この比率は国内の飼育頭数の犬猫比率に似ていますね。
一方で、飼い主1人当たりのフード年間購入金額では犬で約45,000円、猫で約50,000円となっています。
金額で見ると、犬の飼い主の方がよりプレミアム志向になっていることがわかります。
また、市場調査の報告ではドッグフードよりキャットフードの市場がやや大きいと言われています。
猫は好き嫌いがはっきりしている動物ですので、栄養面だけでなく嗜好性も加味してフードを選ぶ飼い主が増えています。それに追従するように、キャットフードの新商品もどんどん投入されています。
さらに、ドライフードの場合は、トッピングを加えたグルメタイプの商品が多くなってきています。
つまり、ドッグフードは全体的なプレミアム化によって市場が拡大していて、
キャットフードは成長領域のプレミアムフードとグルメタイプの商品の需要の高まりによって市場が拡大していると考えられます。
生田目
フード市場は全体的に拡大傾向ですが、キャットフード市場に関してはまだまだ伸びしろがありそうですね。
次に、よりマクロなお話をお伺いしたいのですが、今のペットフード市場はどのような構図になっているのでしょうか。
片山
ご存知の通り、現在ペット市場は伸びていて、全体で1.71.6兆円の規模にまで成長しています。
そのうち、ペットフード市場の規模は4,800億円を超えて、いまだに年々増加しています。
つまり、ペットフードはペット市場全体の成長を牽引していると考えられます。
外資系ではマースグループ、国内系ではユニ・チャームが最大手企業です。
ちなみに、日本ペットフードもトップ10に入っています。
これら上位の企業でフード市場の約80%を占めていると言われています。
生田目
大手企業のフードだけで8割も占めているのですね。
そうすると、今から参入しようとしている企業にとっては非常に入りにくいと感じます。
実際のところ、どのくらい新規参入する会社があるのでしょうか。
さらに、残りの2割の企業はどのような戦略を取っているのか気になります。
片山
ペットフード市場では大手企業の物理的な販売チャネルが強固です。
そのため、新規参入企業にとっては流通経路や販売店舗の獲得が難しく、参入障壁が高というのが一般的な認識でした。
しかし、近年ではネットショップの普及によって販路の確保が比較的簡単になりました。
そのため、スタートアップ企業が続々とペットフード業界に参入しています。
小規模企業がメーカーに製造を委託する形態のスモールビジネスを展開する事例が増えています。
大手と比較して、ブランド力には大きな差がありますが、
それでも、ネットショップであれば広報戦略のやり方の工夫で商品の購入につながるかもしれません。
このように、販売チャネルの多様化によって新たな企業も出てくるようになってきています。
生田目
ありがとうございます。
ある程度歴史がある会社がほとんどかと思っていましたが、新規の会社も結構多いのですね。
確かに、製造委託で簡単に商品を作れるようになりましたし、ネットショップで簡単に販路は作れますね。
ただ、大手企業というよりは新しい会社同士の競争が激化しているように感じますが、いかがでしょうか。
片山
おっしゃる通りです。
ネットショップは言わばペットフード市場の成長に関連している新しい領域です。
そのため、大手企業はすでに持っているブランド力で一定の売上を立てています。
そのうえで、ペットフードの商品自体に強みを持つ会社が選ばれます。
そして、新規の製造企業同士が残りの枠を奪い合うといった構図になっていると想像しています。
確実に言えることは、ブランド力を除けば、ペットフードは”質”で選ばれるようになっている、ということです。
Vol.3へつづく
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