周囲を巻き込む、「未来の物語」の描き方。 vol.1

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #4 】

ゲスト:quantum執行役員 川下和彦 氏


■「事業の物語を描く」とは何か


生田目: 川下さんの「事業作家」に関するnote(https://note.com/kazukawashita/

n/n732bbf097430)を拝読しました。


川下: ありがとうございます。


生田目: 勝手な印象なのですが、川下さんが広告の制作手法をベースにやられている「物語」の描き方は、事業を立ち上げて、軌道に乗せるためのやり方と共通点が多いのではないかと感じました。


つまり、起業家が「こういうものがあったらいいな」と妄想するところから事業は始まる。でも、それを成立させるためには、単に製品やサービスを作るだけでなく、世の中の人に知ってもらわないといけない。そこをあとからやるのではなく、事業を立ち上げるところからセットで考えていこうよ。そういうことなのかなと。


川下: 私はquantumでさまざまな会社の新規事業開発をお手伝いしてきました。その過程ですごくユニークな事業アイデアが生まれたと思うのに、トップマネジメントに提案すると頓挫してしまう。そんなことが無数にありました。それはなぜかと考えたときに、「この製品・サービスがあると、未来はこう変わる」「だから私たちはやりたいんだ」ということを説得できていないからではないかと思ったんです。


提案資料で数字だけを並べてもビジョンは伝わりません。プロジェクトオーナーが将来こんな世の中を作りたいと語り、チームメンバーの心を動かすような未来の物語がなければ、優れたアイデアも絵に描いた餅のまま終わってしまうことが多いんです。


では、どうすれば未来の物語を描くことができるのか。試行錯誤する中で、ここに我々quantumの母体でもある、広告会社の制作手法が使えると気が付きました。CMの脚本を書くように、事業の物語を描く。それは製品・サービスを届けたい相手のことをリアルに想像することであり、その人たちに価値を伝える方法を考えるということであり、自分たちの事業がもたらす未来の姿を具体化するということでもあるのです。


ただ、事業と広告には違う点もあります。広告は短距離走で、とにかく人が振り返るようなインパクトあるアイデアを発想することが重要です。しかし、事業は継続性や実現性も考えないといけない長距離走です。だからアイデア勝負の短編小説ではなく、連載が続いていくことを前提にした長編小説を書かなければならないと思っています。