cross talk/会社による病院経営の必要性 ~ vol.3 教育とマネジメント ~

ゲスト:エキスパート・リンク株式会社 代表取締役 藤田 隆久氏


サービス産業の事業展開支援及び経営コンサルティング業務を行いながら、起業・ベンチャー創出支援ならびに大学等で実践的な人材育成に携わる藤田 隆久氏と、会社による病院経営をテーマとした対談の第3弾です。



■これからの動物病院に必要なのは教育とマネジメント


生田目: 組織化されていない動物病院には、どういう弊害があると思いますか?


藤田氏: 一番の弊害は、品質の問題でしょうか。例えば統一した診療は受けられないでしょうし、そもそも動物病院を選ぶのにも苦労するでしょう。情報はネットに頼るしかないから、客観性に問題が出るかもしれません。


生田目: 動物病院はひとりでも経営という概念はありますが、決して組織ではないですよね。個人経営だと獣医師が何から何まで全部こなさなければならないので、やはり組織になっていないと問題が出てきそうですね。


藤田氏: それをちゃんと組織化し、分業しやっていくということが産業化で、経営が近代化するという事です。


生田目: ああ、なるほど。確かにその通りですね。ところでこのマネジメントの組織化と動物病院経営の融合をさらに進めるためには何が必要なのでしょうか。例えば人柄が良いトップが必要だとか。他の業種の動向でも構わないのですが、教えて頂けますか。


藤田氏: それは教育だと思います。動物病院の例で言うと、プリモのように新入社員教育をきちんと行い属人性に頼らない組織を作ってきた企業は、雰囲気も含めて動物病院のイメージを変えられる強みがあります。品質、単純に治療品質というのではなくて五感すべて雰囲気も含めて安全安心を提供する、これが経営になっていく訳です。それを獣医師ひとりで考えるのではなくて全員で考える。さらに集患からリピーターになるまでも全員で相談し合う。これがマネジメントの組織化と、経営の融合ではないでしょうか。


生田目: そもそも、それをひとりの獣医師に考えさせること自体が間違いですよね。


藤田氏: そうですね。それと、もうひとつ教育で重要なのが、マネジメントです。今はスポーツにも経営が入ってきてスポーツマネジメントを教えていますから。特に今はバスケチームに大手企業がどんどん参入していて。それはスポンサーとしてではなくて、経営者として参入しています。


生田目: 確かに、マネジメント教育も必要なのでしょうね。


藤田氏: だけどまだまだ、獣医療のマネジメントには壁があります。というのは、よそ者が入れないからです。歯科医師にしても僕が関係した獣医師にしても資格がないとなかなかマネジメントができない。だからどうしてもイノベーションが遅くなりがちです。


生田目: そうですね、まだまだこの業界は閉鎖的なところが多いですからね。


藤田氏: だから学校みたいなところでちゃんと経営を学ぶか、あるいは新入社員教育時にPLBS(損益計算書・貸借対照表)を教えるか、そこから意識を変えていくと。今の価値観と将来的な価値観は時とともに大きく変わります。だから将来の自分、将来のあるべき動物病院の姿を見ながら自分のキャリアを考えないといけない。


生田目: それは2021年の動物病院を見て、将来のキャリアを考えたらダメだということですね。最近の獣医療の進歩はめざましいものがあります。以前は子犬から老犬まですべての病気に対応できるという獣医師が多かったのですが、最近は専門医制度ができてしかも海外留学に行く人も増えました。

その上医療機器や診療技術の発達もあり、総合的なレベルが高くなっています。その状況を踏まえると、なんでもひとりでやるというのはもう無理があります。だからこそプリモ動物病院は今後も分業をしっかり行い、飼い主様のために専門家として集中して仕事をしていきたいと考えています。


藤田氏: 確かに獣医療は進歩していますね。とはいえ人の医療はかかりつけ医と専門医に分かれていて、まずは地元の診療所へ行き、そこで診断ができなかったら次の1.5次の診療があります。これが動物医療の世界では、まだまだ確立されていません。

その弊害として、地域の個人動物病院では診断がつかなくても獣医師は分かったふりをせざるを得ない状況があります。結果、医療過誤が起こる可能性も高まる。それ故に生田目社長がおっしゃったように分業制にするのは正しいことです。また獣医師が留学をして医療技術を磨き専門医を増やすことでキャリアの多様性を組織として担保する。これこそが、これからの動物医療には必要だと考えています。


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