起業のリアル。vol.5

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #6 】

ゲスト:「DG TAKANO」代表・高野雅彰氏


■起業家は起業家を育てられない


生田目:高野さんはとても物事をシンプルに考えますよね。AがダメだったらB、Bがダメだったら……と事実だけ見て、その課題にひとつひとつ対処していく。その対応力がすごく高い。まさに起業家向きの発想をされる方だなと。


高野:結局、僕は仮説と検証を繰り返しているだけなんですよ。僕は事業で成功するために、5つの力が必要だと思っています。

・理解力

・判断力

・分析力

・想像力

・行動力

この5つです。でも、日本のサラリーマンがトレーニングを積んできたのはこのうち最初の理解力だけなんです。教えてもらったことを理解することはできるが、行動にまで移せる人はほとんどいない。理解しただけで、納得、満足して終わってしまう。特に分析力と想像力が致命的に欠けています。だから、一歩先の未来を考えることも、やったことを正しく検証することもできない。


僕は「Brain Camp」というトレーニングセミナーも開講していますが、そこで教えているのは、分析力と想像力と行動力のトレーニングです。要するに事業の成功に必要なことは、課題の本質を見抜いて、常識に囚われない解決方法を導き、あとは無敵の行動力で実践する。それだけなんです。


生田目:QAL startupsでは、獣医療を起点とした新たなビジネスを次々と創出していくことを目指しています。ペット業界に優秀な人材を惹きつけるには、何が必要だと思われますか?


高野:そもそも、どんな人がほしいか、じゃないですか。例えば日本人の新卒がほしいのか、中途採用がほしいのか。技術系かマネジメント系か。いろんな属性が考えられます。起業家精神を持っている人がほしいと言っても、どんな起業イメージを持っている人なのか。そこの分析をどこまで深くできるかにあると思います。


ひとことで”魅力的な企業”と言っても、誰にとって魅力的なのか。お客さんにとってなのか、働いている人にとってなのか。全部違うわけです。どこを向くのか分析したうえで、どんな会社にしたいか考える。その発想がないと無理ですよね。


生田目:なるほど。外に目を向ける前に、QAL startupsが求める人材像をもっと具体的にするべきだと。自社なりの優秀さをどう定義するかという問題ですね。ちなみに、起業家育成でいうと、高野さんは高野さんのような人を育てられるのでしょうか?


高野:できないですね。


生田目:起業家は起業家を育てられない、と。


高野:カリスマ的な経営者の会社って、2代目が育たないですよね。そもそも、僕は経営って教えるものじゃないと思っています。うちの社員教育は組織の上に行くほど教えない教育をします。大きくて重要な課題を与え、やり方は自分で考えさせる。どんなやり方でもゴールにたどり着ければいい。僕がやってきたことです。


経営を教えることができないのは、そこに唯一の正解がないからです。優秀な社員を揃えるっていう目標に対して、僕は育成ではなく、社員を入れ替えるというやり方をしましたが、粘り強く教育して成功した人も世の中にはいるわけです。どっちが正解というのはないから、手段は一つではない、無限にあるのだから、とにかく自分の能力、性格、機知で自由に問題を解決するしかない。


生田目:起業家を本質的に育てることはできないけど、起業家精神を身につける経験を積ませたり、そのための場を作ることはできるということでしょうか。


高野:そう思います。わかりやすい例を挙げると、なにか仕事においてピンチに陥ったときに、その人が頼っている上司を外すんです。自分の能力、性格、機知を使ってこの問題を解決させようとする。そうすると、そこで覚醒するか、潰れるかの2択になる。


生田目:まるでブートキャンプですね。


高野:だから、うちのセミナーは「Brain Camp」というんです(笑)。