『引受開業』で院長の想いと地域における役割を引継ぐ開業動物病院を作りたい Vol.5

【 QAL startups流 新規事業の作り方 #2 】


ゲスト

・佐藤 健(M&Aの窓口代表取締役社長)

・久野 知(QAL startups取締役社長)


■理想的な開業/リタイアの形


生田目: 現代の獣医師が勤めるよりも、自ら開業をするメリットとモチベーションは何なのでしょうか。


久野: 自分自身が診療に対して自由にやりたいという人が多いと思います。今は大規模な病院が増えてきて、1院長に対して1勤務医ではなく、10勤務医という規模になってきています。勤める人数が増えてくると規則や規律が整備されていき、自由度が低いと感じる人が増えていきます。スタッフに対しても自分なりのマネージメントでやりたいという意見も多く聞いています。一方で、開業医になると集客やプロモーションに時間をかけたり、飼い主から求められる専門性も高くなっているので、面倒なことをしたくないという獣医師は以前よりも増えていると感じます。


生田目: 時代の流れなのか、自分のスタイルでのんびりやりたいという人も増えていることは確かです。開業しても、従業員にブラック企業だと言われたり、昔なら飼い主からの苦言で済んでいたものが訴訟になってしまう事例などが増えています。それを考えると専門性を高めて勤務医として勤めたほうが充実した人生をおくれるんじゃないかと思うのも当然です。開業したいというニーズはトータルでみれば若干減っていますが、まだまだ旺盛にあります。ちなみに、リタイアは高齢に伴う体調リスクなどで検討される方が多いのですか?


久野: 私自身も高齢や体調リスクが要因だと思っていましたが、実際に承継している先生にお聞きすると、最近は比較的に若くて地域では成功している先生でも承継するケースがあるようです。40〜50歳代までに一気に稼いでしまって、売却する人も多いように感じますが、実際はいかがですか?


佐藤: 経営者のマインド自体が変わりつつあるのだと思います。今までは死ぬまで経営者をするという人がほとんどでしたが、自らが定年を決めてセカンドライフを楽しみたいと思う人も増えています。


これは業界外ですが、専門職として60歳で定年を決めた経営者の事例を紹介しましょう。59歳の経営者の方が半年以内で売りたいという話しがありました。その方は60歳で定年すると自分で決めており、自分でキチンと会社をリタイアをして、第二の人生を楽しみたい、自分の人生にメリハリをつけたいと考えていたのです。これはとても良いことだと思います。人間には寿命があるので、急病急死で検討する間もなく承継が発生する事例もあります。何かが起こった時に会社を引き継ごうとしたらリスクがあまりにも大きいのです。