『引受開業』で院長の想いと地域における役割を引継ぐ開業動物病院を作りたい 最終回

【 QAL startups流 新規事業の作り方 #2 】


ゲスト

・佐藤 健(M&Aの窓口代表取締役社長)

・久野 知(QAL startups取締役社長)


■引受開業の今後の展開


生田目: 動物医療領域を含めてペット業界にとってどのような立場になっていきたいですか?今後の展開について教えてください。

佐藤: 動物病院は社会的なインフラとして重要なものなので、他の中小零細企業と同じように潰れてしまうのはリスクがあります。それを守るためには、きちんと長年築きあげてきた資産を引き継げるようにしたいですね。


そのために私は3つの柱を建てました。ひとつはM&Aはできるものだと訴求すること。次にそのための必要な知識を多くの方々に提供していくこと。最後にご相談があった時に身近な存在として話を聞けて、適切な手数料でご支援できる体制を作っていくことです。動物病院業界のM&A事業という中で、売手と買手の両方にとって意義を重視したサービスを提供したいと思っています。


実際に売手にとっては他の業種と同じで、後継者の不在が著しい業界です。その上、一般業界と比較すると特殊な業界ですから簡単に他社が参入できません。ただ、このまま続けば、産婦人科や歯科医院と同様に動物医療の業界として支障が出る可能性が高いです。先ほどの例(※Vol.6掲載)のように、経営者に万が一のことが起こってからでは遅いので、地域獣医療を守るという観点からも売手のサポートを行っていきます。


また、新規で開業したい人にとっては、既存の動物病院にエリアを抑えられていることが多いうえに、初期投資が大きいため参入は非常に難しい面もあります。もちろん、借入れ等は優遇されやすい業種ではありますが、M&Aという選択肢による承継を行うことで、葬祭業や整理士業と同様にスムーズな参入ができる可能性があるでしょう。今回の引受開業というサービスは、ビジネスとしても業界への貢献からしても大きな可能性を持った分野と判断しました。地域インフラを守る方法のひとつの選択肢として、今後動物病院の市場に定着できるように久野社長と協力していきたいと思っています。


久野: 私たちは動物病院の開業に関しては多くの経験がありますが、単独開業だけで勝負をしていく時代ではないと思います。開業はもちろん、開業してからが重要であり、どのように経営していくのか、情報発信をしていくのかが重要になってきています。開業や運営などでかかる手間の部分を少しでもサポートできるような体制にしていきたい。開業情報や獣医療の詳報だけではなく、一般市場の適正な情報発信を専門とする佐藤社長に協力していただきたい。


開業してからもより広範囲にわたって提案していければ、市場はもちろん、その地域の獣医療にとってプラスになるでしょう。厳しい市場に参入する開業者・買手にとってリスクの少ない市場にする必要があると感じています。正直、首都圏を外れた地域であれば3,000万円あれば一通りの物品をそろえて開業ができます。そんな場所で5,000万円を投じて事業承継をするリスクがあるのでしょうか。そんな情報格差により開業をする方が損をしないように、売手側も不当に収益を得るのではなく適切な条件で取引ができるようなサービスを市場に提供します。今後は動物病院における開業から運営までの広いサポートと、動物病院に限らずトリミングサロンやペットビジネスにも展開することを予定しています。


生田目: 佐藤社長のほうで新しいメソッドを作ることで、信頼できる相談窓口で適正価格を提示できるようになりますね。それは新しい文化を根付かせる第一歩になるでしょう。


久野: 私たちは動物病院で運営のサポートまで含めたサービスの幅を広げつつ、動物病院に限らずトリミングサロンなどQAL(Quality of Animal Life)の向上を通じて、人の幸せに貢献することを目標にやってきたいと思います。