『引受開業』で院長の想いと地域における役割を引継ぐ開業動物病院を作りたい Vol.6

【 QAL startups流 新規事業の作り方 #2 】


ゲスト

・佐藤 健(M&Aの窓口代表取締役社長)

・久野 知(QAL startups取締役社長)


■理想的な開業/リタイアの形


佐藤:例えば、65歳の経営者の方が後継者不在のままがんで急逝されました。動物病院と比較すると少し大きめの事業になりますが、株価としては6億円ほどでした。後継者がいないので社内承継は現実的ではなく、潰すわけにもいかない。そこで、経営に関しては素人の奥様(専業主婦)がワンポイントリリーフとして経営者となられましたが、もちろんうまくいくわけがありません。半年以内に売ろうとM&Aを実施していましたが、経営が激務だったため、途中で奥様が体を壊してしまいました。最終的には売却を行うことは出来ましたが、早めにM&Aという選択肢を取っていれば、体調も悪くならずに、あと数億円は高く売れました。本来は社長がまだ元気なうちに次のバトンタッチを誰にするのかを早めに考えておかないといけません。


生田目: 確かに儲かってなくて負債が多い中で子どもたちに迷惑をかけたくないと思う経営者もいる反面、すごく利益の出ている中での相続にも厄介な部分がありますよね。


佐藤: 誰に相続するのかを若いうちから考えておかないと苦労します。それは経営者の責務ですよ。


生田目: 動物病院の経営も高度複雑化していくので、リタイアの仕方を院長が早めの段階から考えておくことが必要なんですね。来てくれている飼い主にも影響しますし、それは地域のインフラを守るためにもなります。


久野: 動物病院の場合、存在する場所における地域獣医療の役割を担っていますので、その場の患者さんにとっては絶対的なものです。設備・機材を引き継ぐことはそこまで重要ではなく、カルテなどの情報をどう引き継ぐのかが最も大事です。引き受ける側の先生が、地域における役割・患者さんの想いまで引き受けてこそ、事業承継する意味があるのではないでしょうか。それを買手・売手のコンセンサスが取れてこその引受開業だと私は思います。