業界の明日を変える、愛玩動物看護師の未来像~国家資格化による職域の広がりと可能性を考える~ Vol.9【最終回】

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・石岡克己(一般社団法人日本動物看護学会理事長、獣医師、博士(獣医学))


■愛玩動物看護師の今後とその可能性について 続き


生田目:石岡先生としては、愛玩動物看護師たちが今後どのような方向に進んでいくことが望ましいとお考えでしょうか?


石 岡:先ほど、「比較動物学で、対象以外の動物についても総論は学ぶ」という話をしました。実は、この背景には将来的な職域拡大を意識した部分もあります。業務独占でなくても愛玩動物看護師がこれらの分野で働くことはできますので、そういった領域に進んだ人たちが専門家としての信頼を勝ち取れれば、職域はさらに広がっていく可能性があります。法改正まで含む話なので簡単ではありませんが、「愛玩動物看護師」の「愛玩」を外すことが、これからの目標ではないかと個人的には思っています。

生田目:率直なご意見ありがとうございます。それでは最後にお伺いします。

私たち企業が愛玩動物看護師の活躍する理想の未来のために協力できることは何でしょうか。


石 岡:愛玩動物看護師法が制定され、これまで獣医師に限られていた業務の一部を分担できる専門家が日本に初めて誕生しました。動物病院における診療体制や動物愛護行政のあり方なども、今後は愛玩動物看護師の存在を織り込んだものに変わっていくと思います。

民間でも動物病院以外で動物に関連する業務がある場合、これまでは獣医師を雇うか無資格者を雇うかの二択しかありませんでした。愛玩動物看護師は、この間を埋める存在になるのだと思います。

例えば、動物のいる職場で日常的な健康管理や、ペットホテルなどで何かあったときの獣医師との連携などは、獣医師を雇う必要まではなくても、愛玩動物看護師を配置しておけば、他のスタッフも安心できるし動物たちのためにも良い環境が提供できるのではないでしょうか。

そういった求人が今後増えていけば、愛玩動物看護師の知名度も高まり、目指す人たちも増えて来るのだと思います。


生田目:ありがとうございます。私たち企業側も期待に沿えるよう尽力していきます。その上で、これからもっと彼らの活躍の場が広がり、獣医療の発展に寄与する重要な人材たちとなってくれることを期待しています。今回は大変貴重なお話をありがとうございました。


石 岡:こちらこそありがとうございます。ぜひこれからも情報交換をしながら、この業界を発展させていければと思います。



石岡 克己(いしおか かつみ)


  • 一般社団法人日本動物看護学会理事長
  • 日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科 教授
  • 同大学付属動物医療センター 消化器科担当 獣医師
  • 獣医師、博士(獣医学)


1993年に北海道大学獣医学部獣医学科を卒業し、獣医師免許を取得。神奈川の動物病院で数年の勤務の後、北海道大学大学院獣医学研究科に入学、犬の肥満の分子生物学をテーマに博士号を取得。その後、博士研究員を経て2005年より日本獣医生命科学大学教員、2017年より教授。動物看護師の教育に携わりながら付属動物医療センターでは消化器科を受け持ち、内視鏡検査などを担当。