獣医療業界の未来を背負う 八面六臂の活躍をする獣医師 Vol.2

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・上野弘道(東京都獣医師会 会長、獣医師、博士(獣医学))


■異色のキャリアを兼任する上野弘道。誰よりも多面的に獣医療業界をみて、新しい時代を作る 続き


生田目:若くして東京都獣医師会の会長に就任されたときは、獣医療業界に新しい風を吹かせてくれるのではないかという周囲の期待もあり、相当なプレッシャーを感じたのではないでしょうか。


上 野:そうですね。36歳の時に東京都獣医師会の理事となり、2022年6月に会長職を拝命しました。そこからは本当に無我夢中ですね。これまでの諸先輩方が積み上げてきたものの重圧をずっしりと感じますが、でもそれだけではなく新しい挑戦にワクワクしているのも事実です。

これからは獣医療業界にイノベーションを興すべく、既存事業も維持しつつ、新規事業にも力を入れていきたいと考えています。そうすることが私の使命でもあるように感じています。


生田目:それは大きく獣医療業界が変わりそうですね。新規事業を取り入れることで若い世代もチャンスを掴む機会が増えていくように思います。

先ほどご紹介した役職のほかにも日本獣医師政治連盟の委員長も兼任されていると伺いました。団体に所属してから、何か変化したことはありますか?


上 野:はい。以前に比べて政治家と意見交換をする機会が増え、政治の観点から獣医療業界について考えることが増えました。


 たとえば、日本は少子化が進んでいるという話をよく耳にしますが、実はこの背景には非婚化があります。名目賃金が下がり、国民の負担が増加することに応じて非婚率も上がっているという相関関係が示されています。そのため、名目賃金がアップすれば、少なくとも非婚化や国民の負担率の問題を改善することができるのではないかと考えています。実際に世帯年収が低い国民は出産率も低い一方で、世帯年収が900万円以上の国民は、40年前と変わらない出産率であるということがデータで示されています。この問題を解決するためには、国民がきちんと日本の現状について把握し、マクロ経済の視点での国家運営が重要だと考えています。これは、少子化問題の解決だけでなく、犬・猫の飼育頭数の変動にもつながると思います。


つまり、現在の犬・猫の飼育頭数減少の原因も名目賃金の減少にあると私は考えています。猫の飼育頭数には以前から大幅な減少はありませんが、犬の飼育頭数は昔に比べると減少傾向にあります。それは猫よりも犬の飼育のほうが、お金がかかるからですよね。なので、少子化の問題と同様に名目賃金がアップすれば、犬・猫の飼育頭数も増加していくのではないかと思います。そして、飼育頭数を増やすためには動物がいかに私たちによい影響を与えてくれているかを社会に訴えかけ、日本を動物が飼育しやすい国に変えていくことが大事だと思います。これが今の私のモチベーションでもあります。

Vol.3へ続く