【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #3 】
ゲスト:『水曜どうでしょう』チーフディレクター 藤村忠寿 氏
■アントレプレナーそのものな考え方
生田目:たしかに、実績さえ出してしまえば、周りの反応も変わってきますよね。事業でもなんでも、結局は成果を出さないと評価されないものですし、ある意味真理なのかもしれないですね。
藤村:あとは「小さく始める」というのはあるかもしれないですね。目をつけられないために(笑)。「水曜どうでしょう」が1年目で海外ロケ(番組開始後3カ月あまりでオーストラリア縦断ロケを敢行)に行けたのだって、ちゃんとからくりがあるんですよ。
例えば、1回の放送の制作費が50万円くらいとして、10週分だと500万円になります。だから、先に10週分制作費をもらえば海外に行ける。それだけのことなんです。無謀なことは何もやってない。
ただ、会社からすると、「1回のロケで10週分も作れるのか?」とは言いますよね。僕らはできると思ったんで、やれますと。なんせ、北海道のローカル番組が海外ロケに行くなんて、めったにあることじゃなかったから。話題になるじゃないですか。実際は4週分しか作れなかったけど(笑)。
生田目:でも、挑戦した価値はあった、と。
藤村:とにかく従来のローカル番組とは違うことをしたかったんです。僕らは地方局で番組を作っているから、東京の番組のマネをしてもB級にしかならない。タレントも芸人さんもいない。だったら無茶してでも、まったく違うことをやらないと価値が生まれないと思っていたんです。
生田目:逆張りの発想ですね。
藤村:僕自身が若かったのもありますけどね。でも、常に新しいことをやるのもしんどいじゃないですか(笑)。特にバラエティ番組って、出演者も内容も新鮮さが求められるんですよ。だから、いずれ飽きられる運命にある。
そこで反対に僕らが目指したのは、「水戸黄門」です。マンネリでいい、マンネリがいちばん強いんだという発想で作ってきました。そこも逆張りです。
生田目:言い方を変えれば、「ブランドを目指す」ということでもありますよね。実際に「水曜どうでしょう」はこれだけ長く愛される番組になりました。そういう戦略は、番組を始めたときにどこまで見えていたのでしょう?
藤村:戦略はなかったですね。いまの話も、実際のところは全部あと付けです。やってきたことを日々解釈すると、そういう捉え方もできるぞ、と。
生田目:なるほど。これをやったらウケそうだな、というのは?
藤村:それも考えないですね。何かをやっているうちに、次の新しい何かが生まれると思ってやってきたんですよ。とりあえずやる。そうすれば、何かは出てくるじゃないですか。そこで、いいものを拾い集めていく。その繰り返しです。
生田目:やっぱり、藤村さんはテレビのディレクターというより、アントレプレナーそのものですね(笑)。本当に共感します。社長はみんな戦略を仰々しく語りますけど、実際はもがきながらやって、理論はあと付けですから。目の前のことを必死にやるしかないんですよね。
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