「顧客視点」と「実績」という、前進のための原動力。 vol.5

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #3 】

ゲスト:『水曜どうでしょう』チーフディレクター 藤村忠寿 氏


■会社ではなく、顧客側を向いて仕事をしよう


生田目:では、藤村さんにとっての最大の「敵」はなんでしたか?


藤村:社員ですね。番組が始まって2年くらい経った頃かな、「あいつらばっかり楽しそうに仕事をしやがって」という声が、社内のあちこちから、なんとなく聞こえてくるようになったんです。これはまずいなと思って、労働組合の委員長をやりました。


生田目:組合の委員長ですか!今までのお話の藤村さんからイメージすると、かなり意外です。


藤村:社員をまとめるには、これが手っ取り早い方法だと思ったんです。それで社員の不満を全部聞いていきました。そうすると、社員からの印象も良くなるし、会社からも口出しされなくなる。僕が誰よりも現場の人と話しているから、会社から何か言われても、「でも、誰も文句なんて言ってないですよ」と言い返せるんです。そのためにやりました(笑)。


生田目:つまり、「水曜どうでしょう」という番組を続けるという意志を通すために、組合活動までやったということですよね。なるほど。


QAL startupsをやっていて、よく「起業家に向いているのはどういう人だろう」と考えるのですが、それは結局“生存本能”が強いかどうかだと思うんです。どんな壁にぶつかっても、生き残るためにしぶとく動き続けられる人。まさに藤村さんのような人です。


ここでお聞きしたいのは、そういう人って、どうすれば育つのでしょうか。だって、藤村さんのサバイバルスキルは教えられるものではないですよね?


藤村:育てるって考えは、僕にはないですね。でも、そういう生存本能が強いやつを見つけることはできると思います。その意味で会社というものは、人を“育てる”のではなくて、“見つけてくる”のが本来の役割じゃないかなと思います。


生田目:藤村さんの活動を見守ってくれるボスのような方はいたんですか?


藤村:いなかったですね。「お前にばかり好き勝手やらせるわけにはいかん」と言われることがほとんどだったと思います。


生田目:頼る人がいなかったからこそ、生存本能が鍛えられたのかもしれませんね。


藤村:もう、いかんともしがたいくらい会社の売り上げを左右しましたからね。


生田目:さきほどの話にもありましたが、とにかく目に見える実績、ですね。単に利益をあげただけでなく、多くのファンをつかんだことも大きかったのでしょう。


藤村:確かに、そこがポイントかもしれません。みんなどうしても会社のほうを向いて仕事をしちゃうんだけど、僕らは一貫してお客さんのほうを向いて仕事をしてきました。お客さんが味方についていると、会社と交渉するうえでも有利な立場を得られるんですよ。


もし売り上げはそこそこだったとしても、顧客を捕まえているって、実は大きな資産だと思います。顧客がついてきてくれていれば、利益をあげる手段はあとからでも考えられるけど、その基盤がなかったら、単発の事業がうまくいくかどうかに賭けることになってしまう。それはキツいですよ。


生田目:冒頭で言われた、「いまのテレビ局はコンテンツを使い捨てしている」という問題意識とも通じるお話ですね。