獣医師にも「ビジネスマインド」を。vol.3

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #5 】

ゲスト:東京農工大学名誉教授・獣医師 岩﨑利郎 先生


■飼い主のためにあったらいいサービス


岩﨑: そこでQAL startupsですよ。日本の獣医学部では臨床に進む学生のほうが少ないので、大学でビジネスマインドを身につけてもらうのは難しい。生田目さんのような人が集まる場をどう作っていくか。期待したいですね。


生田目: 大学での教育が難しいとしても、できることはいろいろあると思います。例えば、獣医師が業界の外と触れ合う機会を積極的に作るだけでも視野が広がりますよね。

僕は学生時代、不真面目な生徒だったので、勉強をそっちのけでいろんなことをやったのですが、そのひとつに他の大学、学部の学生ばかり集めたインカレサークルを作ったということがあります。

でも、それは遊ぶためのサークルではなく、ディスカッションとディベートの練習をするための場でした。そのサークルでは、獣医学部では出会わない人たちと出会える。そういう経験が、いまの私に役立っています。


岩﨑: そうですね。僕も最近はトリマーさんと知り合う機会が多くて、彼らとの会話からたくさんの気付きをいただいています。職業柄、僕の専門である小動物の皮膚病の勉強にとても熱心なんです。彼らも獣医師とは違う関わり方ですが、ペット業界の中でビジネスをやっている人たちですよね。そういう人たちと獣医師が一緒にできることはもっとないか。働きかけていきたいと思っています。


生田目: 獣医師のためにではなく、ペットの飼い主さんのために岩﨑先生が「あったらいいのに」と感じているものはありますか?


岩﨑: ひとつは遠隔診療のシステムですね。「みるペット」さんがトライしていますが、かかりつけの動物病院や先生にリアルタイムで相談できる。まだ初診は受け付けられませんが、ヒトの医療ではZoomなどを活用したオンライン診療がコロナ禍により解禁されたので、同じ動きは動物医療にも広がっていくのではないかと思っています。特に専門医がいる総合病院が近隣にない地方の飼い主さんにとって、こうしたサービスを待ち望んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


また、獣医師にネットで相談できるサービスも求められています。こちらもヒトの医療では専門医が相談を受け付けるサービスがすでにありますね。

動物医療では「Anicli24(アニクリ24)」さんが近いことをやられていますが、あちらは電話相談です。もっと手軽に、ネットだけで相談できるようになってほしい。症状を聞いて、これはいますぐ病院に行ったほうがいいかどうか判断してくれるだけのものでもいいと思うんです。大切なのは、飼い主さんと獣医師の距離を縮めることです。


>> https://qalstartups.co.jp/