起業のリアル。vol.3

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #6 】

ゲスト:「DG TAKANO」代表・高野雅彰氏

■日本で売れるようになるまで5年もかかった


生田目: すごくロジカルに起業への道筋を考えられていたんですね。実際に起業されてからのハードルは何でしたか?


高野: いっぱいありました。もう全部の落とし穴にハマったというか。2009年に創業してからの10年ちょっとで、ほとんどの失敗を経験してきました。ものを作るのも、会社を作るのも、人を雇うのも全部初めて。しかも、僕の周りは大企業に勤めている人が大半で、起業のメンターがいなかった。人に聞けないからとりあえずやってみる。行く前に、やる前にいくら想像しても答えは出ない。行けば分かる、やれば分かる。この精神で突き進みました。それは、事業における失敗という名の爆弾の山ほど埋まった“地雷原”をダッシュしているようなものです(笑)。しかし、失敗から学べるかどうかが重要なんです。それができないと同じ失敗を永遠に繰り返すことになる。


生田目: 失敗するか、成功するか自分で確かめずにいられない。


高野: そうです。なので、一歩進んでは爆発して、違う道を選んでは爆発しての繰り返しでした。この課題を何カ月以内にクリアしないと倒産するぞ、という千本ノックをやって来た感覚です。


生田目: その中でも特に大変だったことは?


高野: “地獄めぐり“したから特に、というか全部大変でしたけど。……でも、最初はやっぱり営業ですね。


生田目: 営業ですか。


高野: 水は、必ず使うものじゃないですか。で、ここに世界で一番節水できる製品がある。これを使えば絶対にコスト削減できて利益が上がる。合理的に考えたら導入しない理由がないじゃないですか。

でも、日本で売れるようになるまで、なんと5年もかかってしまいました。


僕の分析力が甘かったんです。つまり、会社の誰にとって節水できる製品の導入が合理的かということを考えていなかった。それはオーナーなんですよね。企業の社員たちに営業をかけても、みんなコスト削減に驚くほど関心がない。自分の仕事を増やしたくないって考えが一番で、余計なことをしたら邪魔になるだけ。それでのらりくらりとかわされ続けた。

それならと企業のCSR部門に営業をかけたこともありましたけど、環境問題への貢献で買ってくれた会社は1社もありません。もう絶望ですよね。まさかゼロとは思いませんでしたから。


それを何年もやって、「これじゃあかん」と思ったんです。そこで新たに、水を大量に使っていて、オーナーに直接交渉できる業界はどこかと探しました。それで見つけたのが飲食店でした。自社で営業チーム(DG SALES)を作り、飛び込みで交渉していきました。

時系列でいうと、2013年がどん底で、借金が1億5000万円で売り上げが1500万。もう潰れるぞってタイミングです。その翌年の2014年1月に販売会社を作り、飲食店に売りまくりました。すると一気に売り上げが3億まで上がり、2015年には10億を達成したんです。


生田目: その間、製品の良さは変わってないわけですよね?


高野: そうですね。とにかく提案をするルートや営業をかける業界の分析が甘かった。例えば、ある大企業の社長の講演に行ったとき、名刺交換の時間に僕はプレゼンを始めたんです。「このようなメリットしかない製品なのに、おたくの社員が話を聞いてくれへんから何とかしてくれ」って(笑)。


そうしたら社長秘書に「詳しい話を聞かせてくれ」と言われて別室に呼ばれ、さらに本社に呼ばれたんですよ。すると、今までこちらを散々振り回してきた部長たちが会議室にずらっと並んで、熱心に話を聞くわけです。そこから数カ月後にはその企業の全工場に導入されましたけど、正直嬉しさより、なんなんや、という思いが強かったですね。


生田目: 高野さんみたいに合理的に考える人からすれば、そうした日本の企業の体質がイヤになりませんでしたか?


高野: めっちゃイヤになりました。そら、このままじゃ日本は沈没するわって(笑)。


>> https://qalstartups.co.jp/