起業のリアル。vol.4

【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #6 】

ゲスト:「DG TAKANO」代表・高野雅彰氏


■業績好調の一方、組織では問題が続出


高野: やっと本腰を入れて営業の会社とは別に、企画や開発でも人を雇える状態になったわけですけど……、今度は募集をかけても応募ゼロ。やっぱり名前も知らない東大阪の町工場で働きたいと誰も思わないんですよね。ここでまたイチからかと。


そこから会社のブランディングに注力して、1年半後には「働きたいベンチャー企業の人気ランキング1位」になりました。採用倍率も300倍を超え、そこから先は毎年増え続けています。今ではマイクロソフトやGAFAといった企業と優秀な学生を取り合っているほどです。


ただ、マネジメントも失敗ばかりで。当時の僕は社員を監視するなんてイヤだったんです。もともと、個人が夢を叶えられる場所を作りたくて起業しました。本当に叶えたい夢だったら、上司が監視していなくても働くし、やりたいことに向かって勝手に勉強するはずです。そう考えて放任していたのですが、蓋を開けてみればこれは大失敗でした。考えられないようなトラブルもたくさん起こりました。


当時は東京と大阪にオフィスがあって、僕は二つの拠点を行ったり来たりしていました。すると、僕がいないほうのオフィスでは社員は出勤すらしていなかったんです。それもビルの隣のコインパーキングの警備員さんに言われて知ったんです。「高野さんのところ、いつも真っ暗だけど大丈夫?」って。


生田目: 警備員さんと話すまで、それすら発覚していなかったということですね。


高野: はい。サボるためのマニュアルまで、社員たちの間で共有されていたんです。転機になったのは外国人を採用するようになってからです。人材紹介会社から、「日本語が話せなくてもいいなら、優秀な人はたくさんいる」と言われて、それでもいいと採用しまくりました。それがものすごく優秀な人たちで、びっくりしました。


彼らは夢を持って日本に来たけど、いわゆる体育会系の働き方が合わないし、そこで頑張っても日本語が堪能ではないとか外国人だというだけで出世が難しいという現実を知って絶望していた。そういう人たちにとって、能力さえあれば外国人だろうと関係ないっていう、うちの会社はぴったりだったんだと思います。


そもそも「Bubble90」は世界で売ろうと思っていましたから、遅かれ早かれ外国人は採用するつもりでした。ただ、日本で体力をつけてからでないと海外には行けないと思っていました。その出だしでつまずいたわけなんです。


でも、彼らのように周囲に流されない社員が入ってくると、サボる社員は自ずと会社にいられなくなります。代わりに世界トップレベルの優秀な外国人と働きたいという優秀な日本人が入ってくる。3カ月に一人くらいのペースで人が入れ替わり、創業から10年経って、ようやく去年くらいから自分が思い描いていた組織のスタートラインに立てたという印象です。


生田目: 僕自身もそうでしたが、だいたいのベンチャー企業は売り上げが伸びると組織が崩れ、組織が安定すると売り上げが停滞しますよね。やはり、組織の立ち上げ期は全体のハブがトップに集中していることが大きいのでしょう。


高野: そう思います。社長がいるところしか機能しないんです。


生田目: 灯台のようなものですね。社長が光を当てて見ているところ以外は真っ暗で何をやっているかわからない(笑)。


高野: 自分で考えて動ける人材がそろってくると、そうじゃなくなるのですが、そこに持っていくまでは地獄だと思います。