『引受開業』で院長の想いと地域における役割を引継ぐ開業動物病院を作りたい Vol.3

【 QAL startups流 新規事業の作り方 #2 】


ゲスト

・佐藤 健(M&Aの窓口代表取締役社長)

・久野 知(QAL startups取締役社長)


■動物病院の事業承継市場の課題


生田目: 開業には様々なパターンがあると思います。飼い主様は院長につくものなので、事業承継といえば親族内承継というものが一般的でしたが、それが変わりつつあることを感じています。昔でしたら獣医学部の学生は獣医師の息子がほとんどでしたが、最近は両親が獣医師ではない人も増えてきています。そして女性の割合も上がっています。だからこそ、最近は親族外承継(社内関係者)・M&A(社外)に関してもよく聞くのだと思います。ではそのような形では何か問題があるのですか?

久野: 実際に事業承継が活発になり、開業の選択肢が増えることは、若手獣医師にとって大変意味があり、重要だと思います。しかし、事例として現状の施設・売上・スタッフを考えてもすごく高い金額になっているパターンもあれば、親族外承継で無料同然で引き受けているパターンもあるなど、極端に価格が分かれます。「売手優位」という点が強く、適正な価格が付けられていないことが問題です。


今の時代であれば3,000〜4,000万あれば新規で開業ができます。でも承継のほうが高く売られているケースも目にするので、それは本当に意味のある承継なのかなと疑問に思うこともあります。また、個人同士のやり取りで、承継前提で入社したのに契約書がなく履行されなかったというパターンも見られます。院長のひと声で承継が履行されないこともあるようです。


佐藤: 一般的に中小事業社でのM&Aの売り買いでは、「売手:買手=1:10」というものが通説です。いい会社があったら買いたいという人は多いけど、売りたがらない人がほとんどです。先程も説明しましたが、70歳を超える経営者が245万人いるので、潜在的にM&Aをやらないと廃業してしまう人たちが、日本の大部分を占めています。それなのになぜ売り手が少ないのかは理由がいくつかあるのです。


まず1つ目は経営者のマインドです。日本の経営者はM&Aをすること自体にネガティブなイメージを持っていて、会社を売ることに抵抗があります。「経営者として失格」というマインドがあるので、M&Aに対する拒否反応が非常に強いのです。


2つ目は相談先がわからないということ。大企業であれば繋がりも広く、投資会社や会計事務所などに相談できますが、中小零細企業の場合は誰に相談してよいのかわからないという経営者が多い。そもそも社員2〜3人の会社がM&Aをできるとも思ってもいないでしょう。だから選択肢に浮かんでくることすらないのです。


3つ目は相談した場合でも手数料が高いことです。今のM&Aの仲介会社のほとんどは大企業をターゲットにしています。そのため、最低でも2000万くらいの手数料を取られてしまうので、せっかく売っても手数料でなくなってしまいます。これは私たち受け入れ側の問題でもあります。


この3つの理由で潜在的にすごく大きな市場であるにも関わらず、案件があまり出てこないのです。


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