「動物再生医療の実用化を通じて動物とヒトの幸せを追求する」Vetanic Vol.4

ペット業界の未来を拓く、QAL経営 スペシャル鼎談


ゲスト

・枝村一弥(株式会社Vetanic社外取締役 技術ファウンダー、獣医師(博士))

・望月昭典(株式会社Vetanic代表取締役)


■iPS細胞で何が変わるのか? 再生医療が身近になる?


生田目:私もiPS細胞が発表された時に夢中になって山中伸弥教授の記事を読んでいました。動物はヒトと同じやり方ではiPS細胞はできないとある記事で目にしたのですが、どのように想像して、どうやって導き出したのですか?



枝村:ヒトは「山中4因子」(iPS細胞を作製する際に導入する4つの遺伝子)でiPS細胞ができます。

しかし、イヌではできないので色々な組み合わせを試してiPS細胞ができる遺伝子セットを見つけました。イチから全てを試すのは厳しいのでAの動物で行ったことと、Bの動物で行ったことを融合させるなど、ある程度狙いを定めて試行錯誤していきました。

偶然にも、イヌだけではなく、他の動物にも使える遺伝子セットを見つけることができたことはとても幸運なことだと思います。


研究者には運が必要だと言われます。もちろん運の裏付けにどれだけアカデミックなことを行ったのか、研究をしたのかはありますが、ここに至るまでの人との出会いや技術のスピード感は運が重なり合っていたと思います。

生田目:今はどのような製品、領域を行っているのでしょうか?


望月:すでに実用化されている再生医療には、間葉系幹細胞(MSC)があります。

他社にも同じものがありますが、他社は動物の脂肪から取っているのに対して、私たちはiPS細胞から取っているのがポイントです。

枝村:実は、MSCを取るのには脂肪がたくさん必要なんです。ではその脂肪はどこから取ってくるのでしょうか? どこかでイヌを傷つけているかもしれませんよね。私たちは1頭のイヌを救うのに、他のイヌを傷つけて製剤化するのは何かが違うだろうと考え、iPS細胞でMSCを作りました。

もちろんiPS細胞なので、その先の実質臓器なども期待されていますが、まずは動物に優しくなるために従来の治療を置換できることからやっていきたいと考えています。

Vol.5に続く