獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ
ゲスト
・福山貴昭(ヤマザキ動物看護大学動物看護学部 准教授、博士(学術)、愛玩動物看護師)
■国家資格になり、学生と獣医療現場はどう変わる? 続き
生田目:国家資格についてのお話に戻りますが、動物病院側での愛玩動物看護師の雇用条件として、半数は条件を上げる、25%は検討している、25%は検討もしていないという話を聞いています。資格取得後の条件などについて、現場の対応で気づかれたことはありますか?
福山:雇用条件では、当校の就職課にも相談してくるほど皆さんは困ってるのが現状です。今、愛玩動物看護師の人材確保は非常に困難で、当校の求人倍率は25倍を超える売り手市場です。それほどの人材難の中で、「どの程度の条件を用意すべきか」や「他院の条件を教えてほしい」などの問い合わせもあり、人材獲得競争に勝つための企業側の必死さを感じます。正確な分析結果が出ていないことと地域差もあるので一概には言えませんが、有資格者への手当は3,000~10,000円程度だろうというのが現段階での私の印象です。
生田目:そうなのですね。私たちプリモ動物病院グループでは、有資格者全員に8,000円の底上げをしています。定期昇給と合わせると最低でも10,000円は上がります。
現状では動物看護師の業務自体も各動物病院で定義が異なり、ヒト医療と比較するとまだまだ整備されていない状況ですよね。
福山:私たちに今一番欠けているのがキャリアプランの指針だと感じています。
そもそも動物病院の大半が愛玩動物看護師のキャリアプランを明示していないのです。ある動物病院さんの募集パンフレットに「1年目は雑務、2年目は補助的に、3年目からは1人で準備からすべてを行い、4年目以降は経営に参画してもらうマネージメント業務に携わり、6年目からは専門的な分野の勉強も業務時間内に行えます」という記載があるのを見かけました。
このようにたくさんのモデルケースを基に、私たちがキャリアプランの例を何パターンか学生たちに提示することで愛玩動物看護師としての将来に対する不安は減り、モチベーションも高まると考えています。
生田目:ありがとうございます。多くのキャリアパターンを示すことは、今後の獣医療業界にとって非常に大事なことだと思います。
現在、プリモ動物病院グループのQALスマートペットクリニック(相模原市)でも、ライフステージが変わっても継続的・長期的に働けるようなキャリアプランを増やせたら良いと考えて実践しています。
福山:生田目さんの人材確保が大変な状況を緩和できそうな発想はぜひ私も見習いたいですね。
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