国家資格化に向けて奔走した日本動物看護職協会。会長から見る愛玩動物看護師の未来 Vol.4

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・横田淳子(一般社団法人 日本動物看護職協会会長、愛玩動物看護師)


■「まさか愛玩という名称が付くとは……」。国家資格「愛玩動物看護師」は数々の折衝のうえに生まれた 続き


横田:もし今の段階で法律が成立しなければ、最低でも10年は国家資格化が遅れる可能性があり、これまでの折衝はすべて白紙に戻り、動物看護職の不安定さが改善されないまま時が流れてしまう可能性がありました。この事態は避けなければならないと考え、まずは国家資格化することを優先し、「愛玩」をつけた名称のものを成立させることで前に進んでいくことを決めました。


生田目:法律に「愛玩」がついた背景には、そのような折衝があったのですね。

「業務独占」に関してはどのように決まっていったのでしょうか?

横田:今回、「愛玩動物の診療の補助」が愛玩動物看護師の業務独占として指定されました。「診療の補助」は動物に対する医療行為となりますので、専門職としての知識と技術に基づき、獣医師の指示のもと、適切かつ安全に実施することが重要です。


また、現場の獣医師の理解がなかなか進んでいないかもしれませんが、「補助」というのは「実際に指示されたことを行う」という行為であり、これは「手伝い」とは異なります。獣医師が愛玩動物看護師に指示を出し、その指示が実施されていくことが「診療の補助業務」になり、そしてこの内容は、農林水産省が管轄している「獣医師法」の一部に当てはまります。愛玩動物看護師にとって、獣医療施設における獣医療業務は外すことのできない内容になるため、本法の成立の際には農林水産省にも参画してもらうこととなりました。


このような経緯を経て、「獣医師法」を管轄している農林水産省と「動物の愛護及び管理に関する法律」を管轄する環境省の2省をまたいだ国家資格という珍しい法律となりました。


生田目:業務独占の範囲というのは、今後拡大していく予定はあるのでしょうか?


横田:私は“ある”と考えています。

本協会としては、本法の成立を目指し始めた時から業務範囲の中に「動物看護師によるX線撮影の実施」を入れ込むことを提示してきました。しかし、本法にこの行為を記載することは叶いませんでした。その理由として「教育の不足」が挙げられます。放射線(X線)に関する教育は専門学校の2年間教育では網羅することはできず、今までの状況から考えると業務範囲に入れ込むことは難しかったのです。

しかしそれは、裏を返せば教育が充足すれば業務範囲を拡大できる可能性が高くなる、と言えるでしょう。

Vol.5へ続く