業界の明日を変える、愛玩動物看護師の未来像~国家資格化による職域の広がりと可能性を考える~ Vol.2

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・石岡克己(一般社団法人日本動物看護学会理事長、獣医師、博士(獣医学))


■愛玩動物看護師に求められる知識や技術とは


生田目:石岡先生は一般財団法人動物看護師統一認定機構のカリキュラム検討委員長や、試験問題策定委員長を務めていたとお聞きしています。

実は愛玩動物看護師法が制定され国家資格化されると聞いたとき、私自身が動物病院を多数経営していることもあり、「どのようなカリキュラムになるのだろう」と大いに興味を持ちました。

その後、公表された愛玩動物看護師カリキュラムには、生命倫理から動物の形態・機能学、繁殖学や栄養学、行動学、さらには法律、動物医療コミュニケーションに至るまで、かなり多岐にわたる内容が含まれており、ここまで充実した内容になったのかと驚いたことを覚えています。

石岡先生ご自身は、愛玩動物看護師に求められる知識や技術について、どのようなものであるのが望ましいとお考えですか?

石 岡:基盤となるのは動物看護学であり、動物の健康・福祉にかかわる幅広い知識を網羅する必要があると思います。今から10年ほど前の話になりますが、大学で最初に動物看護の教育カリキュラムを策定した際に、強く意識したことがあります。

それは、「動物看護学をミニ獣医学にしない」ということです。簡略化した獣医学を教えるのではなく、動物看護学を独自の学門として確立することが、今後の発展のために重要であると考えたわけです。


愛玩動物看護師はミニ獣医師ではありません。ヒト医療でも看護師は医師とは異なる視点で患者に向き合い、看護記録や看護過程など独自の方法論があります。全てが獣医療に当てはまるわけではありませんが、応用できる部分は取り入れ、カリキュラムにも反映しています。

愛玩動物看護師だからこそできること、担うことができる重要な役割があるのです。


生田目:ありがとうございます。「愛玩動物看護師はミニ獣医師ではない」というお考えには、大変共感できます。愛玩動物看護師のカリキュラムの特徴として、ヒトの看護師と異なる点は他にどのようなことがありますか?


石 岡:ヒトの看護師と大きく違うのは、カバーしなければならない領域の広さです。医療では看護師以外にも、栄養士や臨床検査技師、理学療法士など様々な専門家が、パラメディカル(医師以外の医療従事者)として活躍し、チーム医療を実施しています。


しかし獣医療では獣医師以外の国家資格がやっと一つできた状況で、さらに新しい資格を作るのはハードルが高いでしょう。つまり多くの業務を獣医師と分担する上で、今後は例えば栄養士や検査技師の業務、さらにリハビリテーションなどについても、愛玩動物看護師に任されることが多くなると考えています。


生田目:様々な分野の業務がありますね。具体的にはどのような業務を担う可能性が考えられますか?

Vol.3へ続く