業界の明日を変える、愛玩動物看護師の未来像~国家資格化による職域の広がりと可能性を考える~ Vol.5

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・石岡克己(一般社団法人日本動物看護学会理事長、獣医師、博士(獣医学))


■イギリスは看護重視の「ナース」、アメリカは技術重視の「テクニシャン」続き


生田目:技術的な仕事が向いている人と、飼い主と動物の心に寄り添う看護的なスタイルが合っている人など、タイプが分かれるのではないでしょうか。


石 岡:そうですね。アメリカでは獣医師とVTに付く無資格のアシスタントまでいるぐらいですから、看護的な部分を重視する人と、技術的な仕事のみを担当する人が分かれても良いのかもしれません。

ただし、日本の愛玩動物看護師の位置づけとしては、どちらかと言えばイギリスのVNに近いものだと思います。認定動物看護師の制度ができた当初からずっと、看護師(ナース)の名称を用いており、単なる技術者ではなく、看護の視点をもつことを重視してきました。

これはヒトの看護師の視点からの発想なのですが、方向としてはイギリスのVNに近いと考えています。


■一般社団法人日本動物看護学会とは?


生田目:次に学術という視点から動物看護学についてお話を伺いたいと思います。まず、石岡先生がこの春に理事長に就任された日本動物看護学会について、教えていただけますか。


石 岡:日本動物看護学会は、動物看護学を学問として確立・発展させることを目的として、1995年12月に設立されました。会員の多くは動物看護師ですが、その他に獣医師、心理学や動物行動学の研究者、教員、学生、一般社会人等、職種や専門の違いを超えた数百人の会員が参加しています。


生田目:多種多様なメンバーが参加しているのですね。具体的にはどのような活動をされているのですか?

石 岡:1995年の設立以来、年1回の学術大会開催と学会誌の発行を続けています。中でも特徴的なのは、学会誌である『Veterinary Nursing』が、日本の動物看護領域で唯一、査読付きの学術誌であることです。

1996年に『Animal Nursing』という誌名で刊行を開始し、当初は主に取材記事やニュースを掲載していたのですが、その後、査読付き原著論文や事例報告、総説等を掲載する学術誌としての方針が固まり、誌名も2014年から現在の『Veterinary Nursing』に変更いたしました。


また、動物看護師たちの学術活動を支援する団体として、動物看護学研究の支援、卒後教育の支援を行っています。

Vol.6へ続く