獣医療業界の未来を背負う 八面六臂の活躍をする獣医師 Vol.4

獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ


ゲスト

・上野弘道(東京都獣医師会 会長、獣医師、博士(獣医学))


■今は伴侶動物を扱う獣医師3.0の時代。これから来る獣医師4.0の時代とは? 続き


上 野:獣医師4.0の時代にするために、私たちにできることはたくさんあると思います。たとえば、動物愛護活動は動物を救うことだけではなく、私たちの心や人生を豊かにすることもできます。獣医療従事者として、治療は動物を救うための重要な業務の一つではありますが、それがすべてではありません。


生田目:ワンヘルスがキーワードになるのですね。獣医師4.0の時代が来る時には、動物を取り巻く社会環境は今とはまた大きく変わっている可能性があると思います。そのために未来の獣医療を担う若手の獣医師、愛玩動物看護師が行っておくべきことはありますか?


上 野:ワンヘルスについては後ほどもう少し詳しくお話できればと思います。未来の獣医療を担う方々は、専門職としての勉強面はもちろんですが、先ほども申し上げたとおり、獣医療従事者としてどのように社会へ貢献できるかという考え方を学んでおくべきだと思います。


生田目:おっしゃる通りです。しかし、実際には学生や新卒の獣医師、愛玩動物看護師は手技を磨くことにで手一杯で、社会へ目を向ける機会はなかなかないですよね。

上 野:そうですよね。先日、たまたま若手の獣医師と我々を取り巻く社会環境の話を通して政治について話す機会があったのですが、話をしていくうちに政治にとても興味をもってくれました。今までそういった機会がなかっただけで、きっかけさえあればいつでも誰でも政治に参加できるんだなと痛感しました。


生田目:そのような刺激を受けるきっかけはとても大事ですね。私たちも若手の方々が社会に興味をもってくれるきっかけづくりをしていかなければならないですね。


上 野:本当にそのように感じました。定期的に若手と話す機会を設ければ、物事の視点を大きく変えることができるのではないかと思います。


そして私がこれからの獣医療業界に求められるのは、先ほどからキーワードとして挙げている「ワンヘルス(One Health)」という考え方だと思います。薬剤耐性菌や人獣共通感染症といった公衆衛生対策、ヒトと動物の共生社会づくりなどがワンヘルスのテーマとして挙げられますが、新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけで、ワンヘルスは安全に生活するうえで重要なポイントとなりました。

ワンヘルスの実現には、獣医療の知識がある獣医師や愛玩動物看護師の協力が必要不可欠だと考えていますが、現在クローズアップされている感染症対策に見られるように実際にはヒトの医者がメインで活動しており、獣医療従事者の介入は十分にできていないのが現状です。

Vol.5へ続く