断言する。経営の本質は、引き算でも掛け算でもない。足し算だ。
なぜか。
掛け算や割り算は、すでにあるものを前提とする。
ゼロは何を掛けてもゼロだ。そこに価値は生まれない。
では、どうするか。足すしかないのだ。
何かを足すことでしか、ゼロから一は生まれない。
しかし、経営を学びたての人や、学問としてしか経営を知らない人たちは、なぜか掛け算や割り算を好んで使いたがる。
効率や成果の比較に飛びつき、今そこにあるリソースの「最適配分」に躍起になる。
だが、それでは新しいものは何一つ生まれない。
私はこの問いに、幾度となく向き合ってきた。
人が育つのも、組織が変わるのも、すべては「何を足せるか」にかかっている。
評価の前に、まず機会を足す。可能性を足す。
スキルの足りない社員にこそ、役割と場を足す。すると、芽が動き始める。
だから経営者に問うべきは、「足りない理由」ではなく、「何を足すか」だ。
この選択ができるかどうか。その分水嶺は、想像力である。私はそう考えている。
想像力のある経営者は、人や組織が最大限に力を発揮したときの姿を描ける。
完成形が見えていれば、「今、何を足せばいいか」は自然と導き出せる。
逆算すればいいだけだ。必要なのは、フレームワークでも理論でもない。
未来を描き、今を定義する力である。
私にも過去、失敗の記憶がある。足りないものを嘆き、足さなかった時期がある。
しかし、希望が生まれるのはいつも「足したとき」だった。
だから私は確信している。足し算の経営は、人を信じる経営だ。
繰り返す。経営とは、足し算で人を生かす想像力の仕事である。
あなたは、いま何を足すだろうか。
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